棋士の似顔絵を描こう

プロ棋士の対局を観戦するうちに、誰かのファンになる方は多いと思います。
中にはあの棋士へのファンレターに似顔絵を添えたい、SNSに似顔絵を投稿したいと思う方もおられるでしょう。
そんなあなたのために、私が誰でも描ける似顔絵の描き方を伝授致しましょう!

まず、似顔絵には2種類あります。
鮎沢まこと先生の「ウロ烏鷺戯評」のような、本人の特徴を捉えて漫画風にデフォルメしたもの。
もう一つはリアルに描くものです。
前者の方がパパッと描けて簡単そう…と思われるでしょうが、実は断然こちらの方が難しいです。私もたまに描きますが、特徴を捉えづらい人、例えば整いすぎた美男美女などは意外に特徴がなく(お雛様の顔、とでも言えば分かりやすいでしょうか)、描けない棋士が大勢います。
逆に後者は練習すれば誰でもそれっぽく描けるし、SNSなどにUPしたときに「おお、うまい!」という反応が返ってくるので私としてはこちらをお勧めします。

最初にお断りしておきますが、この記事はアナログで描く方向けです。デジタルで描く方はご参考までということで。

まず最も簡単な方法。「トレース塗り絵」です。

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必要なものは、紙、元になる写真とそのコピー、鉛筆、ボールペン、お好きな画材です。
写真のコピーは、描きたいサイズに合わせて拡大縮小しておくといいでしょう。
画材は、それこそなんでもいいです。学生の頃、美術の時間に使っていたものでもいいですし、今なら100均で殆ど揃います。私はいつも使っている油絵具と、最近使い始めたペインティングナイフを用意しました。
元の画像は青味がかっていますが、古典絵画のような褐色系の色合いで描きたかったので、白、赤、黄、茶の4色で描いてみることにしました。

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コピーの裏を鉛筆で塗りつぶします。裏紙を使ったのでなんか書いてありますが、無視してください(笑)

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それを紙の上に置き(ずれないように仮止めテープなどで留めておくとよい)、輪郭をボールペンでなぞります。

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薄くて見づらくてすみません。時々コピーをめくって、きちんとトレースできているか確認します。

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あとはひたすら塗っていくだけです。時間の関係で途中になってしまいましたが…。ね、簡単でしょ? (ボブ・ロス風に)


いやいやいや、そんなん絵とちゃうやろ、俺はもっとお絵描きっぽいことがしたいんやー! という意識の高いあなたは、写真と紙を並べて置いて、見ながら描いてくださいね♪
…ってそれがパパッとできたらプロになれるやろー!

ということで、もうちょっとそれっぽい方法もご紹介しましょう。
名付けて「トレペチェック方式」です。

用意するものは、紙、写真、トレーシングペーパー、鉛筆、お好きな画材です。
私は今回は鉛筆で描いてみようと思います。

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まずは写真。
正確に描写するにはまず正確な形が把握できないといけないのですが、色や明暗がついていると形を把握するのが難しくなります。そこでこの写真から形の情報だけを取り出すわけです。

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それがこちら。単に写真の上にトレーシングペーパーを乗せて、鉛筆で輪郭をなぞったものです。
この写真のように極端に暗い部分がある場合は、画像処理ソフトで明るさを上げたものをもう一枚用意するといいです。

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まずはトレーシングペーパーの輪郭線だけを見て描き、少し描いたら絵の上にトレーシングペーパーを乗せ、ずれているところを修正し、また描いて…という作業を繰り返し、トレーシングペーパーがいらなくなったら写真を見ながら描き、明暗や色を加えていきます。

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これも時間の関係で途中になりましたが、ね、簡単でしょ? (ボブ・ロス風に)

いかがでしたでしょうか。あなたも是非棋士の似顔絵に挑戦してみてください。

最後に、私がこれまでに描いた棋士の似顔絵エントリーへのリンクを貼っておきます。
棋士似顔絵インデックス

※この記事は、 囲碁アドベントカレンダー のために書いたものです。

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囲碁にハマったら

前回の記事「私が囲碁にハマったわけ」の続きです。

よく「囲碁はルールは簡単だが遊べるようになるまでが大変だ」と言います。
ヒントになるかどうか怪しいですが、私の体験をご紹介しておきましょう。

さて私は突然囲碁にハマったわけですが、ここでいきなり困りました。
多分0からディープラーニングで学習していくAIにものが言えたらきっと私と同じことを言うでしょう。
361もある交点の、どこに打てばいいのかが分からない!

いやあ、一応本を読めば布石のことは書いてあるんですけど、一手目は右上の星に打つとして次は右下か左下の星、そのあとどっちかをシマって、うーんその辺からどう打っていいか分からない…。

仕方なくなぜかいきなり「ひと目の詰碁」なんか買って延々と解いていました。詰碁には一手目からはっきりとした答えがありますから。

囲碁の入門書を読んだり、夫に9路盤で打って貰ったりしたのですがあまりにも分からなさすぎてとうとう諦めて囲碁教室に通いました。同時期に入門した皆さんが普通に19路盤で打っているのに、私はどこに打ったらいいのか分からない状態が酷かったので、先生が9路盤を出して下さったのを覚えています。なんだか恥ずかしかったです…。

その後13路盤を経てなんとか19路盤でどうにか打てるようになったものの、やっぱりいつもどこに打てばいいのか分からない。仕方がないので棋譜並べを始めました。新聞の囲碁欄を切り抜いて、A4の紙に貼り付けてスクラップ帳を作りました。1局揃ったところで1手目から並べてみました。
めちゃくちゃ時間がかかりました…。
そしてその1局だけですが、「棋士が何を思ってそこに打ったのか」を1手目から終局まで自分なりに想像してコメントを書いていきました。
まあ初心者なので大したこともなくて、「128:入れて」「129:いや」とかそんな感じです(笑)
それから何局か並べるうちに、下手くそなりにもどうにかこうにか打てるようになりました。
意外と(?)詰碁も棋譜並べも好きで、実を言うと対局よりも好きで初心者の割にはよく並べていたと思います。

囲碁教室は、中級に上がって一年ほどで妊娠して辞めてしまったのですが、つわりが収まってからは並べたりもしていましたね。さすがに生まれちゃうともう無理になりました。本業(?)の絵のほうも忙しくなり、遠ざかる一方ですが、囲碁そのものからは離れることができず、打つほうは夫とたまに9路盤で打つくらいで、ほぼ観戦のみの「観る碁」になりました。

おそらくあんな衝撃的な出会いをしたからか、並べたり打ったりする機会が殆どないにも関わらず、囲碁からは離れようにも離れられなくなってしまいました。

六冠にハマったわけはまた次の機会に譲ろうと思いますが、とりあえずTwitterで騒いでいると思いますので、クリスマスが過ぎてからでもお気軽に絡んでやってくださいな。
それでは、またお会いする日まで。

※この記事は、 囲碁アドベントカレンダー のために書いたものです。

私が囲碁にハマったわけ

私が子供のころはどの家にも碁盤か将棋盤(あるいは両方)があり、大抵の男の子はお父さんやお兄さんに教えて貰って一応は遊べるくらいにはなっていたものですが、娯楽が多様化し、子供たちはゲーム機やスマホのゲームで遊ぶようになって、特に一局打つのに一時間以上かかる囲碁はどんどん競技人口が減っています。
日本棋院・関西棋院とも普及に力を入れていますが、入門者向けのイベントを企画しても既に囲碁を知っている人たちが集まるばかりで本当に普及したい「囲碁を全く知らない人たち」には届いていないのが現状で、囲碁ファンも含め普及に関わる方々の悩みの種になっています。
そこで少しでも普及のヒントになればと思い、私が囲碁にハマった理由をご紹介します。

うちの場合は結婚当時、夫が囲碁・将棋ともにでき、私が将棋の駒の動かし方が分かる程度でした。夫は普段から将棋や囲碁のドキュメンタリー番組などを録画して見ていました。その日は、NHKで放送された、渡辺明竜王とボナンザの対局のドキュメンタリーを二人で見ていました。
その時、夫が「将棋はソフトがプロ棋士に近いレベルまで来てるけど、囲碁はまだ全然弱いねんで」と言い出しました。IT企業に勤務経験のある私は不思議に思い、理由を聞きました。ところが、夫はIT関連の知識はゼロに等しかったため、その時の夫の説明では今一つ納得できませんでした。
翌日、まずは囲碁のルールを調べてみようとググった私は雷に打たれたような衝撃を感じました。

囲碁にはルールらしいルールがなかったのです!

黒と白が交互に打つ、というのは二人零和有限確定完全情報ゲームのお約束なのでこういうのは特にルールとして特筆する必要はないでしょう。囲碁は将棋と違って碁盤の交点に打ちますが、別にマスの中に打っても一路減るだけでゲームは成立します。コウは、延々と取り合いっこしていると終わらないので別のところに打たなければならないことが必然的に導出されますし、二眼で活きることも同様に論理的に導出できます。こんな感じで特筆する必要のない項目を削っていくと、残るのは、

  1. 相手の石のダメを全部詰めると、その石を取ることができる
  2. 打った途端にダメが全部詰まってしまう場所には打てない(着手禁止点)が、相手のダメも全部詰まる場合にはそこに打って相手の石を取ることができる
  3. 地合いの広い方(あるいは相手よりたくさんの石を盤面に置いた方)の勝ち

ぐらいでしょうか。残った三つも、果たしてルールと言えるのかどうか微妙です。そうならざるを得ない、言われなくてもそうなるわという気がします。もう「囲碁にはルールがない」と言ってもいいかもというのが私の見解です。そこまでルールが単純なゲームは他にもリバーシ(オセロ)やチェッカーなどがありますが、囲碁と何が違うのか。どうして私は子供の頃遊んでいたリバーシには囲碁ほどハマらなかったのか。

囲碁のゲーム木は、リバーシやチェッカーの比ではないのです。まず盤面が広い。初期状態が将棋などと違い、361ある交点のどこに打ってもいいので、いきなり361通りあります。これが囲碁のゲーム木が巨大である理由の一つ。もう一つ、たとえばダンゴになった大石を打ち上げた跡に打ち込んで手が発生することがあります。そうするとそこからまた大きな枝ができます。リバーシやチェッカーなどは打てる(指せる)場所がどんどん減っていって計算量が収束に向かうのに、囲碁はその時点で再度計算量が爆発的に増えることになります。盤から取り上げた相手の駒を自分の駒として使える将棋のゲーム木はかなり大きいほうだと思いますが、初期状態が決まっているために、途中まで同じルートをたどる棋譜がたくさんありますし、実際プロの対局で一手目から終局まで既存の棋譜と寸分違わぬ進行をたどった例もあります。ところが囲碁はゲーム木が大きすぎて同じ手順が再現されるのは布石ぐらいまでで、同じ棋譜はほぼ存在しないと思っていいでしょう。このゲーム木の大きさが、宇宙に喩えたりされる所以なのでしょう。

そして、囲碁はその性質上、違う形の盤でも遊べるゲームなのです。例えば将棋だと、盤面を増やすにしても減らすにしても大幅なルールの改変が必要ですが、囲碁は全く同じルールのまま円形やハート形の碁盤で遊べます。さらに言えばトーラス(ドーナツのような形)や3次元以上のn次元碁盤でも遊べます。こうなってくると碁盤はコンピューター上にしか存在できなくなってしまいますが。

拙い文章で私のこの興奮が伝わるでしょうか。
検索にひっかかったページでルールを見てここまで思いを巡らしたとき、既に私は恋に堕ちていました。
なんてすごいんだ、美しすぎる。まるで神様が作ったようだ…。

そうやって心をわしづかみにされて現在に至ります。

だから多分、数学やIT関係の人には、ルールを説明してあげるだけで充分です。
「なあなあ、すごいゲーム見つけてんけど、興味ある?」
「なに?」
(鞄から9路盤と石を出す)
「なんや、囲碁か」
「まあルールだけでも聞いとけ」
これだけで勝手にハマってくれると思います。

囲碁にハマったら」に続きます。

※この記事は、 囲碁アドベントカレンダー のために書いたものです。

メロンの思い出

真面目な記事は強い皆様にお任せして、万年7級の私はおやつの話でもしようかと思います(笑)
Twitterで私をフォローしてくださっている方はご存知かもしれませんが、私は井山裕太六冠の熱烈なファンです。初めて名人に挑戦した頃から気になり始め、六冠がタイトル戦に登場する度に中継やニコ生を見たりするようになりました。
もう六冠の保持タイトルが増えすぎて挑戦だったか防衛だったか分からないのですが、天元戦だったと記憶しています。相手は河野臨九段。六冠は初戦からまさかの2連敗をして後がない状態に。
これは大変だ! と思った私、六冠に何か送らねば…と迷惑なことを思いつきました。
一部の囲碁ファンの間で「六冠はおやつにメロンが出たときの勝率が高い」という噂がありました。
さすがに生のメロンは高すぎると思い、メロン果汁の入ったお菓子なら、対局中に食べて頂けるかも…ということで探したところ、某高級果物店がメロンの飴を販売していることを知り、「ファンを装ったテロ」ができないよう、「井山先生にお渡しください」というメッセージを添えて、お店から直接日本棋院関西総本部に送って頂きました。(この飴は現在は販売していないようです。)
その後は3連勝して見事天元に。飴に関しては、アイドルの方などはファンから贈られた食べ物は絶対に口にしないそうなので、職員さんが食べるか捨てるかしたかもしれないけど、とにかく六冠が勝ってくれればそれでいいやと思っていました。
ところが、後日関西総本部から「第4局は関西総本部で打たれたので、メロン飴は対局時のおやつとして出し、残りを井山先生にお渡ししました」というメールを頂きました。捨てられたかと思っていたのでむしろそっちのほうがびっくりでした(笑)
囲碁関係者でもないのに、個人で七大タイトルの対局中のおやつを提供した方って他にどれくらいいらっしゃるのでしょうか…。
なお現在は、食べ物は対局中にはお出しすることはなく、対局後にお渡しすることになっているそうなので、この記事を見たからといって真似するのは御遠慮ください。
というわけで、まさかの七大タイトル戦のおやつを提供したお話でした。

※この記事は、 囲碁アドベントカレンダー のために書いたものです。