私が囲碁にハマったわけ

私が子供のころはどの家にも碁盤か将棋盤(あるいは両方)があり、大抵の男の子はお父さんやお兄さんに教えて貰って一応は遊べるくらいにはなっていたものですが、娯楽が多様化し、子供たちはゲーム機やスマホのゲームで遊ぶようになって、特に一局打つのに一時間以上かかる囲碁はどんどん競技人口が減っています。
日本棋院・関西棋院とも普及に力を入れていますが、入門者向けのイベントを企画しても既に囲碁を知っている人たちが集まるばかりで本当に普及したい「囲碁を全く知らない人たち」には届いていないのが現状で、囲碁ファンも含め普及に関わる方々の悩みの種になっています。
そこで少しでも普及のヒントになればと思い、私が囲碁にハマった理由をご紹介します。

うちの場合は結婚当時、夫が囲碁・将棋ともにでき、私が将棋の駒の動かし方が分かる程度でした。夫は普段から将棋や囲碁のドキュメンタリー番組などを録画して見ていました。その日は、NHKで放送された、渡辺明竜王とボナンザの対局のドキュメンタリーを二人で見ていました。
その時、夫が「将棋はソフトがプロ棋士に近いレベルまで来てるけど、囲碁はまだ全然弱いねんで」と言い出しました。IT企業に勤務経験のある私は不思議に思い、理由を聞きました。ところが、夫はIT関連の知識はゼロに等しかったため、その時の夫の説明では今一つ納得できませんでした。
翌日、まずは囲碁のルールを調べてみようとググった私は雷に打たれたような衝撃を感じました。

囲碁にはルールらしいルールがなかったのです!

黒と白が交互に打つ、というのは二人零和有限確定完全情報ゲームのお約束なのでこういうのは特にルールとして特筆する必要はないでしょう。囲碁は将棋と違って碁盤の交点に打ちますが、別にマスの中に打っても一路減るだけでゲームは成立します。コウは、延々と取り合いっこしていると終わらないので別のところに打たなければならないことが必然的に導出されますし、二眼で活きることも同様に論理的に導出できます。こんな感じで特筆する必要のない項目を削っていくと、残るのは、

  1. 相手の石のダメを全部詰めると、その石を取ることができる
  2. 打った途端にダメが全部詰まってしまう場所には打てない(着手禁止点)が、相手のダメも全部詰まる場合にはそこに打って相手の石を取ることができる
  3. 地合いの広い方(あるいは相手よりたくさんの石を盤面に置いた方)の勝ち

ぐらいでしょうか。残った三つも、果たしてルールと言えるのかどうか微妙です。そうならざるを得ない、言われなくてもそうなるわという気がします。もう「囲碁にはルールがない」と言ってもいいかもというのが私の見解です。そこまでルールが単純なゲームは他にもリバーシ(オセロ)やチェッカーなどがありますが、囲碁と何が違うのか。どうして私は子供の頃遊んでいたリバーシには囲碁ほどハマらなかったのか。

囲碁のゲーム木は、リバーシやチェッカーの比ではないのです。まず盤面が広い。初期状態が将棋などと違い、361ある交点のどこに打ってもいいので、いきなり361通りあります。これが囲碁のゲーム木が巨大である理由の一つ。もう一つ、たとえばダンゴになった大石を打ち上げた跡に打ち込んで手が発生することがあります。そうするとそこからまた大きな枝ができます。リバーシやチェッカーなどは打てる(指せる)場所がどんどん減っていって計算量が収束に向かうのに、囲碁はその時点で再度計算量が爆発的に増えることになります。盤から取り上げた相手の駒を自分の駒として使える将棋のゲーム木はかなり大きいほうだと思いますが、初期状態が決まっているために、途中まで同じルートをたどる棋譜がたくさんありますし、実際プロの対局で一手目から終局まで既存の棋譜と寸分違わぬ進行をたどった例もあります。ところが囲碁はゲーム木が大きすぎて同じ手順が再現されるのは布石ぐらいまでで、同じ棋譜はほぼ存在しないと思っていいでしょう。このゲーム木の大きさが、宇宙に喩えたりされる所以なのでしょう。

そして、囲碁はその性質上、違う形の盤でも遊べるゲームなのです。例えば将棋だと、盤面を増やすにしても減らすにしても大幅なルールの改変が必要ですが、囲碁は全く同じルールのまま円形やハート形の碁盤で遊べます。さらに言えばトーラス(ドーナツのような形)や3次元以上のn次元碁盤でも遊べます。こうなってくると碁盤はコンピューター上にしか存在できなくなってしまいますが。

拙い文章で私のこの興奮が伝わるでしょうか。
検索にひっかかったページでルールを見てここまで思いを巡らしたとき、既に私は恋に堕ちていました。
なんてすごいんだ、美しすぎる。まるで神様が作ったようだ…。

そうやって心をわしづかみにされて現在に至ります。

だから多分、数学やIT関係の人には、ルールを説明してあげるだけで充分です。
「なあなあ、すごいゲーム見つけてんけど、興味ある?」
「なに?」
(鞄から9路盤と石を出す)
「なんや、囲碁か」
「まあルールだけでも聞いとけ」
これだけで勝手にハマってくれると思います。

囲碁にハマったら」に続きます。

※この記事は、 囲碁アドベントカレンダー のために書いたものです。

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