ナイフ遣いへの道

うちの師匠が賞を頂いたそうで、本当に嬉しいです。
ついでに師匠自慢をさせて頂きますと、先生は結構厳しく指導されるんですけど、生徒への愛が感じられて、叱られてもちょっと嬉しいんですよね。いつも私たちのことを考えていて下さっていて、たくさんある画集を見せて下さっては「こういう絵を描かなきゃいかん」とか仰っています。描いているところも惜しげもなく見せてくださいます。本当にひょんなことからご縁があって師事したのですが、いい先生に巡り会えたなあといつも感謝しています。

201711171601

最近の道具です。

子供が生まれてから筆を洗うのが大変になり、ナイフが使えないものかと模索してきましたが、前作からほぼ完全にナイフに移行しました。
絵具は少し増えましたが、見事に酸化鉄(土系顔料)です。

使っている絵具が土系顔料なので、ナイフの削れ方が半端じゃないです。絵を描かない方に分かるように説明すると、レンガでゴリゴリ削ってるようなものです。
なので時々金切鋏やグラインダーで形を整えます。左下二つは、元々小さな菱形のナイフだったのですが、もはや原型を留めていません。細部描写や絵具を混ぜ合わせるのに使っています。右の大きいのは広い面積を塗るのに使っています。左上の変わった形のは、地塗りをするのに使っています。

まだまだナイフの使い方に慣れているとは言えませんが、使いこなせるようになって、力強いタッチで表現したいなと思います。

20171107_00

少し前の全体図。髪の毛は後から被せるため、塗り残してあります。

20171117_00

コントラストを強くしたかったので、顔の左半分を暗くし、ようやく髪を被せました。
コントラストはこのぐらい強いほうがドラマティックになりますね。このヴァルールに合わせて、他の部分も塗り直していくことにします。
家族を描いていた頃と違い、まずい絵を描いてしまうと大変失礼なので気を引き締めて制作に臨んでいます。

応援して頂けると嬉しいです。

Advertisements

同人誌「七冠王」

Twitter で長々と予告しておりました同人誌「七冠王」をようやく完成させました。
販売サイトはこちらになります。

https://picoket.jp/items/7487

201711171520

表紙はこんな感じで表と裏が繋がっています。
大勢で作る同人誌だと、表表紙と裏表紙を別々の人が担当することが多く、こんなデザインは無理なのですが、せっかく一人で作るのだからと、こういうデザインにしてみました。

中身の見本も何ページか掲載していますので、もし気に入ったらお買い上げくださいね! お待ち申し上げております!

最後になりましたが、写真を提供して頂きました日本棋院、写真を撮影されたカメラマンのお二人、窓口となってくださった担当氏、執筆中に応援頂きました皆様に深く御礼申し上げます。

100号へ

やる気あんのかってぐらい間が開いてしまいました。
flickr には毎日のように何かをUPしていますし、遂に Behance にアカウントを取りました。絵をUPすればTwitterやfacebookに流れるようにしてあるので、まあそちらを見て頂ければ生存確認はできるかと…(笑)。

サイトの名前を、暫定的に適当な名前にしていたのですが、以前他所のブログサイトで使用していたタイトル「ルビコンの匙」が気に入っていたので、結局それに戻した格好です。タイトルだけではなんのブログだか分からなくなってしまいましたが…。

DVC00009

習作でゴーサインが出たので100号に移ります。
いつも通り裏キャンにジェッソを3層塗り、木枠に張ります。

DVC00589

ローアンバーの地塗りをします。いつもはキャンバスの目を残していたのですが、ナイフで描く場合は目を潰しておいたほうがいいことが分かったので、親の仇のように目を潰しました。途中ローアンバーとバーントアンバーを間違えて変なツートンカラーみたいになっちゃってますが気にしない気にしない(気にしろよ!)。

DVC00586

DVC00588

IMG_3371

あとはひたすらチョークで下描きをしていきます。
今回は日本理化学のスリムチョークという、直径が7mmのものを使っています。ヤナギの木炭の中細ぐらいに相当し、細かい部分も描きやすいです。

習作では元の写真に合わせて2点透視にしましたが、いざ100号に引き延ばしてみると2点透視にすると違和感が凄かったので1点透視に変更しました。大号数に拡大すると、習作では気づかなかった、少しでも変なところが拡大されることによって目立つようになるので、いまだにこんな途中変更をしてしまいます。まだまだ大号数に慣れていない証拠です…orz

最後の写真でキャンバスに文字が書き込んでありますが、教室で先生に質問するためのものです。
自分でも気になって「こういう風に変更したほうがいいかな」と思った点はすべてOKが出たのでこのまま着彩に入れることになりました。

あとは同人誌をさっさと片付けなければ…(汗)。

F30習作

前回から随分時間が経ってしまいましたが、ちゃんと制作は進んでいます。
ただ、途中で同人誌(井山裕太オンリー本)を作ろうと思い立ってしまい(笑)、そちらにかなり時間を割かれていますが、囲碁ファンなら「今年しかない!」という私の気持ち、分かって頂けますよね???

esquisse1

家で描いたエスキースを先生にお見せしたところ、「真正面すぎて奥行感が分かりにくい、今いくつかエスキースを描いてみて」と言われました。それで描いたのがこの3案。

SCN_0022

SCN_0023

SCN_0024

結局、3つ目の案が採用ということになりました。

これを元にF30のキャンバスに習作を描きます。私はエスキースからいきなり100号を描くことはまだ怖くてできません(笑)。なぜF30かというと、小号数の中ではF30が一番F100と縦横比が近いからです。

IMG_3356

艶引けしたところと、塗りたてのところが混在して見づらいですね、すみません。
眼鏡とホクロ(重要!)は最後に描くのでまだ描き込んでいません。

元の写真がNHK杯の決勝なので、緑色の机(?)を入れようとすると、思い切って右に寄せた三角構図になりました。先生からも「面白い構図でいいんじゃないか」ということでOKを頂きました。ただ、手が両手とも同じような形なので、左手の形を変え、盤面が真っ平で全く見えないのが不自然なのでもう少しパースを付けるように指摘されました。

この習作を元にF100の本制作に取り掛かります。習作は、人に見せるものではないので、100号を描き進めるうちに「ここはこうしたほうがいいかな…」等と悩んだらまずこれで実験します。いきなり100号で実験して失敗すると目も当てられない状況になってしまいますので…。

先生がいつも「有名人なのがちょっとなあ…」と仰るのですが、あの、あなた最初写真見て「羽生さん」って仰いましたよね!? (相当根に持ってる)

同人誌予約者リスト

このリストに載っている方を優先して販売致します。
欲しいと思ってるのにこの中に名前がない方はご連絡ください。
よろしくお願い致します。

【注意事項】少部数発行となりますので、一般的な同人誌より高めの値段設定となります。
現在の予定ではA5本文16ページ、送料込で千円です。
ちょっと高すぎる、あるいは欲しかったけれど時期を逃して入手できなかった方のために、発行から3か月後ぐらいにPDFの無料配布を予定しています。それでも紙の本が欲しいという方のみご予約をお願いいたします。

リプライをくれた方
オジサン‏ @osajii56 さん *2
keiko‏ @quatrze さん *2
タケフさんが通る @takefusan さん
mutsuko‏ @mutsuko_kyoto さん
ざる碁○ヽ(*´∀`)八(´∀`*)ノ●‏ @zarugo1515 さん
ゆう‏ @yuu0000013 さん
つちだきょうこ‏ @kyonchn さん
かさじぞう‏ @jizou4152 さん
まさこ‏ @mw_0912 さん
沙耶‏ @saya_fly さん
荘田茜‏ @akane_soda さん
ジャスミン‏ @jasmine_64 さん
こてふトナル‏ @gofukutea さん
もろき @moromoroki さん

いいねしてくれた方
みず -Mizu- @Creator_Mizu さん
NASU @vitaminBDU100 さん
陽菜莉 @hinarin8888 さん
さだ @sada0324 さん
計4部

贈呈・保存
六冠
石井先生
私が以前習ってた先生
ばっは子さん
担当氏
自分の分
計6部

合計23部

バカも極めりゃ山さえ動く

この前出品したばかりですが、頭の中はもう来年のことでいっぱいです。
関係者の多大なるご協力のお陰で、遂に井山六冠を描かせて頂く運びになりました。
ご協力を賜りました日本棋院の職員の皆様に厚く御礼申し上げます。

rough

Twitterでの応援にお応えして、今回は制作過程を見せて行こうと思います。
ラフ。普段はもっといい加減なのですが、人に見せる必要がありましたので比較的まともに描いています。

jidori0jidori

元画像 (日本棋院から使用許諾を得ています) はタイトル戦の写真なのでスーツ姿、脇息が手前にあり邪魔、レンズが広角、などの理由から、私がロンTとジーパンで六冠になりきって自撮りをします。ご自宅で研究されている姿にしたかったので…。
2枚に分かれているのは標準レンズでは1枚に収めることが難しかったから(これ四畳半の部屋なんですよ…)。傾いてるのは息子が保育園から帰ってくるまでに済まさなきゃと大慌てで撮ったからです(笑)。まあこれが作品じゃないので…。
何が辛かったって、男装用の胸を潰すコルセットのようなものを装着して撮影したのですが、いくら貧乳でも「あるものをなかったことにする」のは結構苦しかったです(苦労したとこ、そこ!?)。なお、なんで夫に頼まなかったのかと言うと、夫は体つきが結構がっしりしていて、男性にしては華奢な六冠になりきって貰うのは厳しいと判断したからです。

esquisse

エスキース。元画像と総合してご自宅で研究されている場面を捏造します(笑)。

ところがこれを先生にお見せしたところ、「良くないねえ」と一蹴されました…。ま、よくあることですけど。
もしこの案でいくなら、縦構図にして盤の上辺と六冠の腰から後ろは切れている構図の方が良いとのこと。
言われてみればそうか…って思うのですが、頭を冷やして考え直します。

esquisse1

使用許諾を得ている写真はもう一枚あるので、ラフを描きます。
思いきって横構図にしてみたけどどうかな…。

IMG_3350

それを元に自撮りをします。
こうなると足つき碁盤が欲しくなりますねえ。古道具屋さんやオークションで地道に探しましょうかね。

IMG_3352

盤をどけた絵も撮っておきます。
それにしてもスーツがシワだらけ。六冠のスーツにはあまりシワが入っておらず、「これがオーダーと吊るしの差か…」などとしょうもないことに感動したりして。中身が細いってことにしといてくださいwww

これらの写真を元に再度エスキースを描き直し、先生にチェックして頂きます。
パスすると良いのですが…。
そしてこちらの構図を採用することになった場合、膝から崩れ落ちて号泣する担当の方の姿が目に浮かびます…。


六冠を描きたい、という思いは、ずいぶん前からありました。ただ、畏れ多くてとても今の自分には描けない、という気持ちの方が勝ってしまい、まさに「その発想はなかった!」という感じ。

転機となったのがこれ。

DVC00298

ビッグコミックの表紙です。気に入りすぎて3冊も買ってしまいました。

そして、主に将棋の棋士を描いておられる荒川由貴さんの存在を知ったこと。

この辺りで(もちろんお二人には到底及びませんが)「もしかして私も描いていいのかな…」という思いが芽生え始めます。思い立ったら我慢していられない性格なので、すぐさま日本棋院にお電話しました。でも慣れないことをしたものだからあわあわしちゃって、最初に電話を取ってくださった方は「え? 日本語が通じない…w」って感じでした。すみません…。
ここからの詳しい経緯は申し上げられませんが、私が六冠の大ファンであることをご存知の方がおられたおかげで、写真の使用許諾を頂くことが出来ました。本当にありがとうございます。

また、解剖学が専門だというフォロワーさんからも、ご協力を頂けることになりました。

Twitterの囲碁クラスタのフォロワーさんからも沢山の応援を頂いています。

我ながらバカだなーと思うんですけど、バカみたいな情熱をずっと持ち続けていると、こんなにも大勢の方に助けて頂けるんだなと、本気で感動しています。

こういうのを「カステラの法則」と言うそうですが、これ、単に「六冠を描きたい」と言い続けているだけでは駄目で、熱心に観戦しているとか、人体を描くために美術解剖学まで勉強しているとか、他にもデッサンや模写を頑張っているとか、そういうのを見ていてくれる人がいたから成ったことだと思っています。私の地道な努力を見ていてくれた皆様ありがとうございます。頑張って描かせて頂きますのでよろしくお願い致します。

棋士の似顔絵を描こう

プロ棋士の対局を観戦するうちに、誰かのファンになる方は多いと思います。
中にはあの棋士へのファンレターに似顔絵を添えたい、SNSに似顔絵を投稿したいと思う方もおられるでしょう。
そんなあなたのために、私が誰でも描ける似顔絵の描き方を伝授致しましょう!

まず、似顔絵には2種類あります。
鮎沢まこと先生の「ウロ烏鷺戯評」のような、本人の特徴を捉えて漫画風にデフォルメしたもの。
もう一つはリアルに描くものです。
前者の方がパパッと描けて簡単そう…と思われるでしょうが、実は断然こちらの方が難しいです。私もたまに描きますが、特徴を捉えづらい人、例えば整いすぎた美男美女などは意外に特徴がなく(お雛様の顔、とでも言えば分かりやすいでしょうか)、描けない棋士が大勢います。
逆に後者は練習すれば誰でもそれっぽく描けるし、SNSなどにUPしたときに「おお、うまい!」という反応が返ってくるので私としてはこちらをお勧めします。

最初にお断りしておきますが、この記事はアナログで描く方向けです。デジタルで描く方はご参考までということで。

まず最も簡単な方法。「トレース塗り絵」です。

IMG_2253
必要なものは、紙、元になる写真とそのコピー、鉛筆、ボールペン、お好きな画材です。
写真のコピーは、描きたいサイズに合わせて拡大縮小しておくといいでしょう。
画材は、それこそなんでもいいです。学生の頃、美術の時間に使っていたものでもいいですし、今なら100均で殆ど揃います。私はいつも使っている油絵具と、最近使い始めたペインティングナイフを用意しました。
元の画像は青味がかっていますが、古典絵画のような褐色系の色合いで描きたかったので、白、赤、黄、茶の4色で描いてみることにしました。

IMG_2256
コピーの裏を鉛筆で塗りつぶします。裏紙を使ったのでなんか書いてありますが、無視してください(笑)

IMG_2257
それを紙の上に置き(ずれないように仮止めテープなどで留めておくとよい)、輪郭をボールペンでなぞります。

IMG_2258
薄くて見づらくてすみません。時々コピーをめくって、きちんとトレースできているか確認します。

DVC00227
DVC00229
IMG_2261
あとはひたすら塗っていくだけです。時間の関係で途中になってしまいましたが…。ね、簡単でしょ? (ボブ・ロス風に)


いやいやいや、そんなん絵とちゃうやろ、俺はもっとお絵描きっぽいことがしたいんやー! という意識の高いあなたは、写真と紙を並べて置いて、見ながら描いてくださいね♪
…ってそれがパパッとできたらプロになれるやろー!

ということで、もうちょっとそれっぽい方法もご紹介しましょう。
名付けて「トレペチェック方式」です。

用意するものは、紙、写真、トレーシングペーパー、鉛筆、お好きな画材です。
私は今回は鉛筆で描いてみようと思います。

IMG_2264
まずは写真。
正確に描写するにはまず正確な形が把握できないといけないのですが、色や明暗がついていると形を把握するのが難しくなります。そこでこの写真から形の情報だけを取り出すわけです。

IMG_2267
それがこちら。単に写真の上にトレーシングペーパーを乗せて、鉛筆で輪郭をなぞったものです。
この写真のように極端に暗い部分がある場合は、画像処理ソフトで明るさを上げたものをもう一枚用意するといいです。

IMG_2268
まずはトレーシングペーパーの輪郭線だけを見て描き、少し描いたら絵の上にトレーシングペーパーを乗せ、ずれているところを修正し、また描いて…という作業を繰り返し、トレーシングペーパーがいらなくなったら写真を見ながら描き、明暗や色を加えていきます。

IMG_2270
これも時間の関係で途中になりましたが、ね、簡単でしょ? (ボブ・ロス風に)

いかがでしたでしょうか。あなたも是非棋士の似顔絵に挑戦してみてください。

最後に、私がこれまでに描いた棋士の似顔絵エントリーへのリンクを貼っておきます。
棋士似顔絵インデックス

※この記事は、 囲碁アドベントカレンダー のために書いたものです。

囲碁にハマったら

前回の記事「私が囲碁にハマったわけ」の続きです。

よく「囲碁はルールは簡単だが遊べるようになるまでが大変だ」と言います。
ヒントになるかどうか怪しいですが、私の体験をご紹介しておきましょう。

さて私は突然囲碁にハマったわけですが、ここでいきなり困りました。
多分0からディープラーニングで学習していくAIにものが言えたらきっと私と同じことを言うでしょう。
361もある交点の、どこに打てばいいのかが分からない!

いやあ、一応本を読めば布石のことは書いてあるんですけど、一手目は右上の星に打つとして次は右下か左下の星、そのあとどっちかをシマって、うーんその辺からどう打っていいか分からない…。

仕方なくなぜかいきなり「ひと目の詰碁」なんか買って延々と解いていました。詰碁には一手目からはっきりとした答えがありますから。

囲碁の入門書を読んだり、夫に9路盤で打って貰ったりしたのですがあまりにも分からなさすぎてとうとう諦めて囲碁教室に通いました。同時期に入門した皆さんが普通に19路盤で打っているのに、私はどこに打ったらいいのか分からない状態が酷かったので、先生が9路盤を出して下さったのを覚えています。なんだか恥ずかしかったです…。

その後13路盤を経てなんとか19路盤でどうにか打てるようになったものの、やっぱりいつもどこに打てばいいのか分からない。仕方がないので棋譜並べを始めました。新聞の囲碁欄を切り抜いて、A4の紙に貼り付けてスクラップ帳を作りました。1局揃ったところで1手目から並べてみました。
めちゃくちゃ時間がかかりました…。
そしてその1局だけですが、「棋士が何を思ってそこに打ったのか」を1手目から終局まで自分なりに想像してコメントを書いていきました。
まあ初心者なので大したこともなくて、「128:入れて」「129:いや」とかそんな感じです(笑)
それから何局か並べるうちに、下手くそなりにもどうにかこうにか打てるようになりました。
意外と(?)詰碁も棋譜並べも好きで、実を言うと対局よりも好きで初心者の割にはよく並べていたと思います。

囲碁教室は、中級に上がって一年ほどで妊娠して辞めてしまったのですが、つわりが収まってからは並べたりもしていましたね。さすがに生まれちゃうともう無理になりました。本業(?)の絵のほうも忙しくなり、遠ざかる一方ですが、囲碁そのものからは離れることができず、打つほうは夫とたまに9路盤で打つくらいで、ほぼ観戦のみの「観る碁」になりました。

おそらくあんな衝撃的な出会いをしたからか、並べたり打ったりする機会が殆どないにも関わらず、囲碁からは離れようにも離れられなくなってしまいました。

六冠にハマったわけはまた次の機会に譲ろうと思いますが、とりあえずTwitterで騒いでいると思いますので、クリスマスが過ぎてからでもお気軽に絡んでやってくださいな。
それでは、またお会いする日まで。

※この記事は、 囲碁アドベントカレンダー のために書いたものです。

私が囲碁にハマったわけ

私が子供のころはどの家にも碁盤か将棋盤(あるいは両方)があり、大抵の男の子はお父さんやお兄さんに教えて貰って一応は遊べるくらいにはなっていたものですが、娯楽が多様化し、子供たちはゲーム機やスマホのゲームで遊ぶようになって、特に一局打つのに一時間以上かかる囲碁はどんどん競技人口が減っています。
日本棋院・関西棋院とも普及に力を入れていますが、入門者向けのイベントを企画しても既に囲碁を知っている人たちが集まるばかりで本当に普及したい「囲碁を全く知らない人たち」には届いていないのが現状で、囲碁ファンも含め普及に関わる方々の悩みの種になっています。
そこで少しでも普及のヒントになればと思い、私が囲碁にハマった理由をご紹介します。

うちの場合は結婚当時、夫が囲碁・将棋ともにでき、私が将棋の駒の動かし方が分かる程度でした。夫は普段から将棋や囲碁のドキュメンタリー番組などを録画して見ていました。その日は、NHKで放送された、渡辺明竜王とボナンザの対局のドキュメンタリーを二人で見ていました。
その時、夫が「将棋はソフトがプロ棋士に近いレベルまで来てるけど、囲碁はまだ全然弱いねんで」と言い出しました。IT企業に勤務経験のある私は不思議に思い、理由を聞きました。ところが、夫はIT関連の知識はゼロに等しかったため、その時の夫の説明では今一つ納得できませんでした。
翌日、まずは囲碁のルールを調べてみようとググった私は雷に打たれたような衝撃を感じました。

囲碁にはルールらしいルールがなかったのです!

黒と白が交互に打つ、というのは二人零和有限確定完全情報ゲームのお約束なのでこういうのは特にルールとして特筆する必要はないでしょう。囲碁は将棋と違って碁盤の交点に打ちますが、別にマスの中に打っても一路減るだけでゲームは成立します。コウは、延々と取り合いっこしていると終わらないので別のところに打たなければならないことが必然的に導出されますし、二眼で活きることも同様に論理的に導出できます。こんな感じで特筆する必要のない項目を削っていくと、残るのは、

  1. 相手の石のダメを全部詰めると、その石を取ることができる
  2. 打った途端にダメが全部詰まってしまう場所には打てない(着手禁止点)が、相手のダメも全部詰まる場合にはそこに打って相手の石を取ることができる
  3. 地合いの広い方(あるいは相手よりたくさんの石を盤面に置いた方)の勝ち

ぐらいでしょうか。残った三つも、果たしてルールと言えるのかどうか微妙です。そうならざるを得ない、言われなくてもそうなるわという気がします。もう「囲碁にはルールがない」と言ってもいいかもというのが私の見解です。そこまでルールが単純なゲームは他にもリバーシ(オセロ)やチェッカーなどがありますが、囲碁と何が違うのか。どうして私は子供の頃遊んでいたリバーシには囲碁ほどハマらなかったのか。

囲碁のゲーム木は、リバーシやチェッカーの比ではないのです。まず盤面が広い。初期状態が将棋などと違い、361ある交点のどこに打ってもいいので、いきなり361通りあります。これが囲碁のゲーム木が巨大である理由の一つ。もう一つ、たとえばダンゴになった大石を打ち上げた跡に打ち込んで手が発生することがあります。そうするとそこからまた大きな枝ができます。リバーシやチェッカーなどは打てる(指せる)場所がどんどん減っていって計算量が収束に向かうのに、囲碁はその時点で再度計算量が爆発的に増えることになります。盤から取り上げた相手の駒を自分の駒として使える将棋のゲーム木はかなり大きいほうだと思いますが、初期状態が決まっているために、途中まで同じルートをたどる棋譜がたくさんありますし、実際プロの対局で一手目から終局まで既存の棋譜と寸分違わぬ進行をたどった例もあります。ところが囲碁はゲーム木が大きすぎて同じ手順が再現されるのは布石ぐらいまでで、同じ棋譜はほぼ存在しないと思っていいでしょう。このゲーム木の大きさが、宇宙に喩えたりされる所以なのでしょう。

そして、囲碁はその性質上、違う形の盤でも遊べるゲームなのです。例えば将棋だと、盤面を増やすにしても減らすにしても大幅なルールの改変が必要ですが、囲碁は全く同じルールのまま円形やハート形の碁盤で遊べます。さらに言えばトーラス(ドーナツのような形)や3次元以上のn次元碁盤でも遊べます。こうなってくると碁盤はコンピューター上にしか存在できなくなってしまいますが。

拙い文章で私のこの興奮が伝わるでしょうか。
検索にひっかかったページでルールを見てここまで思いを巡らしたとき、既に私は恋に堕ちていました。
なんてすごいんだ、美しすぎる。まるで神様が作ったようだ…。

そうやって心をわしづかみにされて現在に至ります。

だから多分、数学やIT関係の人には、ルールを説明してあげるだけで充分です。
「なあなあ、すごいゲーム見つけてんけど、興味ある?」
「なに?」
(鞄から9路盤と石を出す)
「なんや、囲碁か」
「まあルールだけでも聞いとけ」
これだけで勝手にハマってくれると思います。

囲碁にハマったら」に続きます。

※この記事は、 囲碁アドベントカレンダー のために書いたものです。